しーなは、コンビニのおねーさん!
 新しく仕事を探し始めた頃に、たまたま「オープンスタッフ募集」の広告を見たの。
 コンビニの経験はなかったけど、新しく出来るところなら、みんな新人みたいなものだし、人間関係まっさらで、やりやすそうって思ったんだ。

 電話したら、「履歴書を持って面接会場に来てください」と言うことだったの。
 会場は、立地予定地近くにあった、勤労会館の一階のお座敷で、少し離れた団地でもう一軒オープンするお店の面接も一緒にやっていて、結構人は多かったかな。
 入り口近くに、希望時間とか志望動機とかを書く紙が用意されていて、それに書き込んでしばらくしたら、名前が呼ばれてお座敷に通されたの。
 中にいたのは、ちょっと年配に近い男の人と、「普通のおばさん」な感じの女の人。オーナーと、オーナー夫人ね。
 もう一人、スーツ姿で横にいるのは、本部の店舗指導担当の人。なんか、とっても若くて、おなかはちょっと出てたけど、笑顔が爽やかな印象。
 どんなことを話したかな。まぁ、一通りセオリー通りの話をして、そうそう、「うちの制服はこんな色でこんな形です」みたいなことを言ってたかな。だから、それにあわせたえりつきの服を下に着てね、なんて。
 あんまりきつい感じはしないし、まずまず、いい感じな人たちかな、って思った。


 でもね。
 結果を知らせる電話は、実は不採用だったんだよ。
「今回は見送り」って言われたの。まぁ、あれだけの人数がいればよりどりみどりだろうし、こっちは未経験だし、しょうがないか、って思ってた。
 そしたら、2時間くらい後に、もう一度電話がかかってきたんだよ。
 なんでも、自分たちが選んだ人が、家の都合でやっぱり駄目だ、ってことになったらしいんだ。
 言ってみればしーな、繰り上がり当選だよね。でも、始まりなんてこんなものじゃないかなぁ。




 研修で初めてお店に行ったとき、建物は完成してたけど、内装工事がまだ終わってなかった。
 工事の人が慌しく作業する中、水もまだきていない店内で掃除の段取りを教わったり、やっと電源を引いたレジを使って、みんなで交代でレジの打ち方を習ってたの。
 陳列棚は辛うじてあったけど、所々商品がならび始めたのは2回目の研修からだったかな。
 自分たちでかごを持って、商品を何個か入れて、レジに並んで、それを順番の人がレジで精算する練習。
 ドキドキしたけど、でも、楽しかったかな。
 なんて思えるのは過ぎてしまった話だからで、その時は必死で話されることをメモにとって、頭の中で繰り返してた。

 オープンセレモニー、っていうのがあったんだけど、実はそれ、さぼってしまったの。
 今思うと、滅多にないことなんだから見ておけば良かったな。
 オープンから数日は、チラシの切り抜きを持って来た人には低脂肪乳プレゼントとか、おにぎりが半額とか、一部商品割引とか、けっこう特典が盛りだくさん。顔を知ってるひとも買い物に来て、ほんと、緊張したなぁ。
 2人体勢の予定だったけど、オープン時は3人でシフトに入ってて、慣れないレジ打ちに品だしにって、あたふたしてた。いきなり放り出されるのではなくて、1週間くらいは本部のスタッフの人が応援に来てくれてたから、実際にやらないとわからないことを聞いて、メモして、何かあるたびにメモを確認して・・・



 あれから2年になるのかぁ。

 仕事が自分に合わなければ、すぐやめる気でいたのに、
 いつの間にかオーナーに、「ベテラン」よばわりされる人に、なっちゃった。

 オープンにいた人で、今もお店にいるの、しーなを入れて3人だけ。
 顔も覚える間もなくいなくなった人もいるし、 すっごく仲良かったのに、家の事情でこられなくなった人もいる。
 みんな、どうしてるのかなあ。



 いろんなことが、あったなぁ・・・

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※ 11/7分をUPしてから、プロローグがあることを思い出しました(汗
※ 11/9  一話とOPの順番を入れ替えました。